VOL.72

内科も皮膚科も整形外科も
患者のすべてを診ていく
主治医を目指して

新小岩駅前総合クリニック
一般内科 設楽久美氏(39歳)

茨城県出身

2001年
東京女子医科大学医学部 卒業
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 入局
2001年
日立総合病院
2003年
東京女子医科大学附属青山病院 膠原病リウマチ痛風内科(2016年閉院)
2004年
東京都立大塚病院 リウマチ膠原病科
2005年
社会保険中央総合病院(現:JCHO 東京山手メディカルセンター)
呼吸器内科
2006年
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター
2012年
東京女子医科大学附属八千代医療センター
2013年
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター
2016年
新小岩駅前総合クリニック 入職

大学卒業後、ずっと膠原病を専門としてきた設楽久美氏は、2016年に大学病院から地域医療を中心としたクリニックに転身。職場はもちろん担当する患者も診療科も変わる、大胆なキャリアチェンジを決めた背景には、設楽氏が医師を目指したときから持っていた強い思いがあった。

リクルートドクターズキャリア4月号掲載

BEFORE 転職前

患者を臓器別に診るのでなく
全身を診たいと考えて
膠原病を専門に選んだ

医学部や医師のことをよく知らないまま入学

風邪などで病院によく通い、小さい頃から医療の世界は身近だったという設楽氏。理系科目が得意で、クラスメートに医師や薬剤師志望も多かったせいか、自らも医師を目指すようになった。

「といっても入学するまでは勉強の大変さや医師の仕事など、ほとんどわかっていなくて(笑)。東京女子医科大学を選んだのも両親の勧め。男子が多い高校だったので、大学で少し環境を変えてはどうか?というアドバイスでした」

理系クラスで男子が圧倒的に多く雑然としていた雰囲気から、女子学生に囲まれ、毎朝きちんと講義に出る落ち着いた生活へ。大学で環境はがらりと変わった。

「同級生が数人ずつのグループに分けられ、互いに勉強を教え合う教育の仕組みもよかったですね。特に私は医学部や医師についてよく知らなかったので、各自の考え方の違いも参考になりました」

さらに5、6年生の病院実習に出て、ようやく医師の仕事はこういうものかと実感した設楽氏。

「そのときは患者さんと医師や看護師とのやりとりを見て、私も患者さんに親しみを持たれる医師になりたいと思ったんです」

卒業後は膠原病を専門とし大学病院を中心に診療

卒業後は同大附属膠原病リウマチ痛風センターに入局。病院実習での経験から、循環器や消化器といった臓器別より全身を診る診療科がいいと希望したからだ。

「入局1年目に勉強のためいくつかの診療科を回った程度で、2年目からずっと膠原病による全身疾患を診てきました。いずれも慢性疾患で、一度発症した病気とは一生つき合うことになります。症状を抑える治療もずっと続くのですから、それを継続していただくためにも、私は患者さんとの信頼関係を大切にしてきたんです」

設楽氏は本人のバックグラウンドやどのような治療を希望するかなどを詳しく聞き、診療を重ねて信頼関係を築き上げていった。

「ただ、大学病院に来られる患者さんとは話がうまく膨らまず、本当にお困りのことをすぐつかめないこともありました。多くの方にとって大学病院は縁遠く感じられ、ふだんの診療よりも緊張されているのでしょう。親しみを持たれる医師になりたかった私としては残念に思えましたね」

また関節リウマチなどの痛みで日常生活がうまくいかないことへの苛立ち、薬を長期間飲み続けることへの不安など、気持ちの面でも不安定な患者も多い。そうした場合も設楽氏はできる限り丁寧な説明を心がけたという。

「薬に対する不安には薬を飲む目的、考えられる副作用などを丁寧に説明し、少しでも不安を減らせるようにと考えていました」

患者の全身を診る医師を目指して新たなチャレンジ

関節リウマチ治療の理想の一つは、自らの研究テーマでもある「生活に支障が生じる機能障害を予防し、患者が病気を気にせず暮らせること」と考える設楽氏だが、ここ10年ほどで治療法が劇的に進化し、そうした良好な結果が得やすくなったという。

「研究成果を患者さんにフィードバックして、より良い生活を送れる方も増えたため、今後は別のことに取り組みたくなったのです」

数多くの研究論文をまとめ、診療だけでなく研究の面でも一区切りついた時期だった設楽氏は、リウマチ以外の分野に挑戦したい気持ちが強くなっていった。

「しかも担当している患者さんから、最近胃が痛むとか風邪気味だとかいった話を聞き、該当する診療科を紹介するたびに、そのまま自分で診られないことへの矛盾も感じていたんです。もともと私は患者さんの全身を診る医師を目指していたのですから」

膠原病の専門家からプライマリーケアを基本とするかかりつけ医に転身し、患者一人ひとりを長く診ていきたいと考え、転職サイトで調べたり、エージェントに頼んだりしたと設楽氏。

「大学病院は患者さんにとって特別な場所だとわかっていたので、より身近な存在となるクリニックで、現場で多くの先輩医師から学べるよう、それなりの規模の医療法人を探していたのです」

AFTER 転職後

プライマリーケアを行う
地域密着のクリニックへ
新たな経験の日々に満足

毎日が新鮮で勉強の連続 それが成長の実感につながる

診療内容や規模といった希望を満たし、転職先となったのが東京都内城東地区(江戸川区・葛飾区・江東区)を中心に病院やクリニックを展開する医療法人社団 城東桐和会。設楽氏は2016年10月から同法人の新小岩駅前総合クリニックで診療を始めている。

「入職前の面談で当院の野口総院長とも話をしたのですが、こちらで行うプライマリーケアは非常に幅広く、内科や皮膚科の疾患はもちろん、軽度の骨折などもある程度診ていくのには驚きましたね」

やや不安はあったものの、診療を始めてみると毎日が新鮮と設楽氏は新たな職場に満足している。

「お子さん、働き盛りの世代、高齢の方と患者さんの年齢層も症状もさまざま。これまで診ていなかった疾病も多く、診療のガイドラインも私の学生時代とは大きく変わっているので勉強することばかり。それでも日々成長している実感があって楽しいですね」

また冬には感染症の患者が増えるなど、診療の中で季節の移り変わりを感じるのも、以前にはない経験だったという。一方で患者との信頼関係づくりを心がけている点では、以前の病院でも同クリニックでも変わりはない。

「これまで患者さんと信頼を深めるようコミュニケーションに心を砕いてきましたが、そうした部分は当クリニックでも生かせると感じています。患者さんも最初からさほど緊張せずに話してくれますし、やはり大学病院との雰囲気の違いも感じますね(笑)」

専門家から直接指導を受けて小児科への苦手意識も改善

このように何事にも前向きな設楽氏が、唯一苦手意識を持っていたのが子どもの診療だ。

「お子さんの場合、診療室に入ってもらうのもひと苦労。やっと入ったと思えば泣き始めるなど、戸惑うことばかりでしたから」

通常、同クリニックでは診療での困り事は院内の医師や院長に相談するが、設楽氏の悩みは専門家の力を借りた方がいいと総院長の野口氏が判断。法人内の別のクリニックにいる小児科の医師のもとで学べるよう手配してくれた。

「今は週1回、小児科で診療を見学し、指導を受けているんです。お子さんには自分もマスクを外して顔を見せて対応するといった基本中の基本から、よくある疾患とその診断などの知識まで、実践を通して学ぶことができ、今後の診療への手応えを感じています」

やりたいことをやればいい 妹の励ましが大きな支えに

今後は日々研鑽を積み、患者の病気や日常生活について聞き、食生活や運動習慣をもとに健康維持・増進のアドバイスをするなど、地域の健康を守りたいという。

「何でも診るプライマリー医として、患者さんに自信を持って対応できるようになりたいですね」

生き生きと将来の夢を語る設楽氏だが、働く場所も診療科も異なるキャリアを選ぶときに迷いはなかったのだろうか?

「医学部への進学もそうでしたが、もともとやりたいと思ったらまず飛び込んでみるタイプ。ただ初めての転職で、かなり迷った時期があったのも確かです」

そのときに励ましてくれ、決断する力をくれたのが、眼科医である妹の言葉だったという。

「未知の世界に飛び込むには勇気が必要ですが、『せっかくの医師免許。やれることは何でもやってみたらいい』という妹の応援は大きな後押しになりました」

また現在は当直や休日の呼び出しもなく、オフの日も十分に楽しめていると設楽氏。

「オンもオフもこれまでと違う世界が広がっている感じで、これからの自分が本当に楽しみです」

研修先となる東小岩わんぱくクリニックで小児を診療する設楽氏。 画像

研修先となる東小岩わんぱくクリニックで小児を診療する設楽氏。

WELCOME

転職先の病院からのメッセージ
独自の日本型プライマリーケアを構築

主治医制による総合診療で地域住民の健康を守る

同クリニックは地域に密着し、主治医制で総合診療を行うのが特徴。一般内科、整形外科、小児科、皮膚科など多様な疾患・症状に対応できる体制を整えている。

総院長の野口千明氏は、それを欧州型のプライマリーケアを日本型に発展させたものと解説する。

「欧州型のプライマリー医は診療のみを担当し、高度な検査は外部機関任せですが、当クリニックはX線や内視鏡などをそろえ、読影専門の常勤医も1人在籍。院内で一通りのことができる、スーパーマーケットのようなプライマリーケアを目指しています」

検査結果や問診を通じて生活習慣病の進行状況を推測し、詳しい検査や治療を行って病気の早期発見につなげるという。そうした中で設楽氏の入職は総合診療の大きな力になったと野口氏。

「膠原病はさまざまな疾患の基礎であり、その専門分野から総合診療に移る医師は多いと聞きます。設楽先生の場合は特に幅広い分野を診療してくれますし、飲み込みも早いので助かりますね」

また同クリニックは医師同士が互いに苦手分野を相談し、最新情報を教え合うなどコミュニケーションが活発で、日常的に知識や技術を習得する機会も豊富だ。

「設楽先生のように新たな専門性を持つ医師が入職すると、知識をある程度共有でき、医師全員のスキルアップが図れるのです」

加えて母体の医療法人グループは、2018年に千葉県浦安市に開設予定の新病院を含め、計800床程度の入院施設を擁する。

「今後は当クリニックも訪問診療に力を入れる予定。在宅の患者さんの容体が急変した際は、病院が迅速に対応するといったスムーズな連携も強みの一つになります」

さらにグループ内には大学病院や地域の基幹病院の医師も非常勤などで勤務しており、今後はそうした人脈を通じて強固な地域連携の構築も進めていく。

「総合診療と地域連携が経験できるため、新たな専門性を身につけたい人や将来独立を目指す人にも向いている環境といえます」

野口千明氏

野口千明
新小岩駅前総合クリニック 総院長
1989年東京大学医学部卒業後、第三外科(現:胃食道・乳腺内分泌外科)に入局。同大大学院在籍中(1994-98)に、非常勤先として一人で診療するプライマリーケアのクリニックを経験した後、2006年に桐和会グループに入職した。2007年から新小岩駅前総合クリニックの院長に就任。2016年から総院長となり法人全体の運営にも力を注ぐ。

新小岩駅前総合クリニック

東京都東部を中心にクリニックや病院を持つ桐和会グループ。その一員である医療法人社団 城東桐和会が展開するクリニックの一つで、プライマリーケアの充実を目指し、疾患の早期発見を目的に設備を整え、内視鏡検査、超音波検査、レントゲン撮影、アレルギー検査、骨粗しょう症検査、心電図やMRI検査なども行っている。また患者が利用しやすいよう平日夜や日曜・祝日も診療しているが、勤務シフトは明確なため、マイペースで働きやすい環境といえる。

新小岩駅前総合クリニック

正式名称 医療法人社団 城東桐和会 新小岩駅前総合クリニック
所在地 東京都葛飾区新小岩2-1-1 リーフコンフォート新小岩3階
設立年 2007年
診療科目 一般内科
整形外科
小児科
皮膚科
神経科
病床数 0床
常勤医師数 5人(うち1人は読影専門医師)
非常勤医師数 12人
外来患者数 平日 約300人/日
土曜日 約227人/日
日曜日 約179人/日
入院患者数 0人/日
(2016年12月時点)