岐阜大学医学部附属病院 整形外科 医局長に聞く ここから描けるキャリア

整形外科領域の各分野で
高いレベルの診療を学べる環境

基幹病院や大学での臨床、研究、国内外留学と、医師として多くの経験を重ねている松本和医局長に、充実した研修プログラムと自身のキャリア、岐阜大学医学部附属病院整形外科におけるキャリアプランについて伺いました。

臨床だけでなく
大学院での研究という
キャリアの魅力

岐阜大学医学部附属病院
整形外科 准教授
松本 和 先生(医局長)

松本先生のこれまでのキャリアを教えてください

私は1994年に岐阜大学医学部を卒業して、国立国際医療センター(現:国立国際医療研究センター)、都立墨東病院、岩井整形外科内科病院で、整形外科領域と救急の経験を積みました。その当時は大学の医局に入局するのが一般的でしたが、当時は大学の医局に入ってしまうと指定研修病院以外で働くことは難しく、一度は東京に出たいと思っていたので、決断しました。

東京で臨床を6年間経験しましたが、そのなかで日増しに研究への思いが強くなっていき、母校に戻って大学院に入り、愛知医科大学に国内留学しました。2004年に大学院を修了して学位は取ったものの、その後も研究を続けたいと考えていました。医師の場合、国内で研究を続けるとなると、臨床と並行しながらになりますので、頭の切り替えが難しくなります。研究をしていても患者さんのことは常に気にかけていますし、「実験か患者さんか」となれば、患者さんが優先です。そこで、研究に集中できる環境を求めて、2006年に海外留学しました。海外で4年間過ごし、その間は臨床を離れることになりましたが、非常に順調にキャリアを積むことができたと思っています。

岐阜大学医学部附属病院整形外科はどんな医局でしょうか

特徴のひとつは、秋山教授が赴任されて以降、専門性が高くなったという点が挙げられます。私は膝関節外科を専門にしていますが、以前は少ない人数で足の関節外科全般を担当していました。ひとりの医師が多くの疾患の患者さんを診なくてはなりませんでしたが、現在では、ほぼ膝の関節疾患の治療に専念できるようになっています。各分野の専門家がいることが強みでもあり、それぞれが専門性を追求できる環境が整ったことで、若い医師も高いレベルの診療を間近にみて学ぶことができるのが特徴だと思います。

医局の雰囲気でいえば、もともと整形外科医はざっくばらんに話せる人が多いように感じますし、非常に良い雰囲気だと思っています。当院は地方の大学ではありますが、新専門医制度開始以降、整形外科を専攻する医師は増えており、今年も6人が仲間に加わりました。学生は医局の雰囲気、学びやすさなどの情報に敏感ですが、臨床実習などを通じてその雰囲気を感じ取ってくれているのではないでしょうか。

研修プログラムの特色を教えてください

研修プログラムには大きく分けて2つあります。基本となるⅠ型は、研修制度の軸となるもので、大学病院での臨床を中心としたものです。もう1つのⅡ型は関連病院である地域の基幹病院を中心としています。

Ⅰ型の場合は後期研修1年目に岐阜大学、2年目以降は専門医取得まで地域医療研修病院、大型総合研修病院の両方をバランスよくまわります。Ⅱ型は、専門研修基幹施設である県総合医療センターを主に、岐阜大学医学部附属病院整形外科、地域医療研修病院をまわり、ともに後期研修4年目で専門医試験の受験に必要な45単位を取得します。受けられる研修内容に差はありません。基本は大学病院を中心としたⅠ型になりますが、もちろん、本人が希望すればⅡ型での研修も可能で、実際にⅡ型を選択する後期研修医もいます。

当院の後期研修の特徴は、整形外科領域のあらゆる疾患を網羅できるところだと思います。特に骨腫瘍は岐阜大学整形外科の“伝統”ともいえる領域ですし、小児整形外科は岐阜県立希望が丘こども医療福祉センターが関連病院となっているため、実地研修で経験を積むことができるのが大きな強みです。

5年目、10年目のキャリアプランを教えてください

順調にいけば後期研修4年目で整形外科専門医の受験は可能なので、5年目の医師は、専門医資格を取得するために症例経験を積んでいます。当院の関連病院は、県や地域の基幹病院なので、手術の執刀や助手としての経験も十分に積むことができ、症例が足りなくて困ることはありません。

また5年目は、専門医資格取得と並行して大学院への進学を考える時期でもあるでしょう。研究をやりたい人は研究へ、臨床をやりたい人はサブスペシャリティを決める時期になります。もちろん、社会人大学院生として臨床を続けながら博士号取得もできます。

後期研修修了後に大学院に進んだ人の場合、10年目は大学院修了の時期にあたります。臨床に戻ってもよいですし、留学して研究を続ける選択肢もあります。家庭の事情で地域医療に携わりたいと希望する場合には、関連病院に赴任することも可能です。開業を考えている場合にはそのサポートもします。

私自身が大学院に進学して研究に励み、海外留学でさらに研究に邁進した経験があり、個人的には大学院で学ぶことの楽しさ、研究のおもしろさをもっと伝えたいと思っています。私は海外で4年間過ごしましたが、4年間ひとつのことに集中して考えるということは、人生のなかでもなかなかできることではありません。その楽しさを伝え、共有したいと思っています。

また、全国的には女性の整形外科医が減っていると聞きます。女性医師の場合、放射線の使用制限や手術機会が限定されるなど、出産や育児などのライフイベントによって制限がかかるのは確かです。しかし、外科のなかでも整形外科はキャリアの選択肢が多く、術者がより手術をしやすいように助手としてのスキルを高めたり、リハビリテーション医にシフトしたりと、自分の興味や状況に応じて活躍できる道を見つけている医師もいます。

最後にメッセージをお願いします

私たちは、自分たちが持つ技術を後輩に伝えていくことがひとつの使命だと考えています。確かに指導にあたる立場としては、その場その場で大変だと思うことはありますが、私は「人を育てることは喜びだ」と思って若手医師に接するようにしています。

例えば、後期研修1年目で整形外科領域のことが何もわからない医師の場合、症例のプレゼンテーションがうまくできないことがあります。そうした場合にも朝早く出勤して何度でも練習につきあいますし、親身に相談にのります。もちろんときには厳しくすることもあると思いますが、愛情を持って接することを心がけています。

岐阜大学出身者でも他大学出身者でも分け隔てなく、時間を惜しまずに指導してくれる先輩がたくさんいて、女性医師もその生活を考慮してサポートをします。当院で研修を希望する人はぜひ来ていただきたいです。

2018年6月掲載

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