自動翻訳が発達する AI 時代は「英語ができなくても困らない時代」と言えます。このように英語学修の外的動機が弱くなる一方、「やっぱり自分で英語を使えるようになりたい」という内的動機がこれからの時代の英語学修の動機となります。ここではそんな「やっぱり自分で英語を使えるようになりたい」と感じる医師に向けて、キャリアアップに繋がる英語のヒントをご紹介します。
皆さんは 3MT® というものを聞いたことはありますか?
これは Three Minute Thesis の略で、「博士論文の研究発表を3分間で行う」という豪州クイーンズランド大学発祥の発表形式です。
学位には大きく分けて Master「修士」と PhD「博士」の2種類がありますが、英語圏では「修士論文」を dissertation と、そして「博士論文」を thesis と呼びます。そして学位取得のための「口頭試問」を viva や defense と呼びます。
このような学位取得のための正規の viva や defense とは別に、大学院では自身の研究内容を専門外の人にわかりやすく伝えるという発表会を行うのですが、それを3分間で実施しようというのがこの 3MT® なのです。
今ではこの 3MT® は世界中に広がり、分野を問わずどんな研究者にも「短い時間で一般の方に自身の研究の重要性をわかりやすい英語で伝える能力」が求められています。
医学系の研究において、Abstract「抄録」の構造は Background → Methods → Results → Conclusions となっています。しかし3分間しかない 3MT® においてはこの構造を変える必要があります。
自身の研究について背景知識のない人が聴衆ですので、Abstract のBackground, Methods, Results, and Conclusions の4要素の中で最も時間をかけて話すべきは Background なのです。したがってこの Background を下記の4項目に分解して説明することが重要です。
1) Opening: 最初の「掴み」
2) Explain the key word: 研究のキーワードの説明
3) Describe the issue: 研究が解決する問題の説明
4) Research question: 研究が解明する疑問
ここに十分に時間を費やすことが重要です。そして下記の項目は簡潔に述べるにとどめましょう。
5) Methods: 方法
6) Results: 結果
そして最後は Conclusions を印象に残る take-home message として伝えます。
7) Conclusions: 結論
これが 3MT® での基本構造となります。興味を持った方は是非下記の3つの3MT® をご覧ください。どれも上記の構造となっていることに気がつくはずです。
“Do we need memory clinic pharmacists?”
“Mapping the most efficient drug route into the brain”
“SAR WARS: A Journey through chemical space”
それでは次回の「Medical English キャリアアップのための英語術」をお楽しみに。
あわせて読みたい記事
知っているようで知らない…。医師なら知っておきたいとっておきの英語をご紹介します。
英文で紹介状を作成する場合の表現を、主訴・現病歴・既往歴・身体診察に分けてご紹介します。