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片頭痛に関する英語表現

在留外国人や訪日外国人が増加する中、英語での医療面接を経験される読者の方も増えている事と思います。
実際に英語で医療面接をしてみるとわかると思いますが、患者さんが症状を表現するのに使う英語表現は実に多様です。
そこで今月は様々な症状をきたす「片頭痛」をテーマに、英語圏の患者さんが実際に使う英語表現をご紹介します。

1.「ズキズキする痛み」の英語表現

日本語では「頭痛がする」場合、「頭が痛い」と表現することが多いですが、英語では “My head hurts.” ではなく、“I have a headache.” と表現する方が一般的です。 この headache は可算名詞ですので、 “I have a headache.” と “I have headaches.” のように使い分けられ、それぞれ「1回の頭痛」と「複数回の頭痛」と、意味が異なります。

頭痛の原因の一つである subarachnoid hemorrhage (SAH) の場合、日本では「バットで殴られたような」などの表現が使われますが、英語では thunderclap という形容詞がよく使われます。これは「雷に打たれたような」を意味し、SAH 特有の痛みをうまく表現しています。

頭痛の多くは「緊張性頭痛tension headache、「片頭痛migraine、「群発性頭痛cluster headache という primary headache が原因ですが、それぞれの痛みには特有の形容詞が使われます。

筋肉の緊張が原因で発生する tension headache は「締め付けられる」痛みとして表現されます。英語圏の患者さんはこれを squeezing pain のように表現します。この squeezing以外にも band-liketighteningのような形容詞もよく使われます。痛みのエピソードが「群れ」 cluster でやって来る cluster headache は「刺されるような」痛み penetrating painとして表現されますが、これ以外にも「ナイフで刺されるような」 stabbing や「針で刺されるような」 piercing、「ドリルで刺されるような」 drilling といった形容詞も使われます。また「アイスピックで刺されるような頭痛」として ice pick headache なんていう表現も存在します。「片頭痛」migraine は「拍動性の」痛み pulsating pain を引き起こしますが、患者さんはこれを「ズキズキする」痛み throbbing/pounding pain と表現します。

2.一般用語で表現する随伴症状

頭痛が migraine による場合、頭痛以外にも実に様々な「随伴症状accompanying symptoms が出現します。代表的なものとして「吐き気」と「嘔吐」がありますが、前者は nausea、後者は vomiting というのが最も一般的な表現です。よく「吐き気がある」という形容詞として I feel nauseous という表現を英語母国語話者も使いますが、これは厳密に言うと誤った使い方です。一般の人が使う分には問題ありませんが、厳密にはこの形容詞は「吐き気を催すくらい見ていて気持ち悪い」という意味になりますので、医師である皆さんは「吐き気が催された」という意味の形容詞である I feel nauseated が正しい表現であるということを知っておいてください。

めまいがする」には dizzy という形容詞が使われ、「めまい」dizziness もpre-syncope, lightheadedness, vertigo, and disequilibrium というように細分化されますが、一般の患者さんはこれ以外にも giddywoozy といった「フラフラする」という形容詞を使う場合もあります。

これ以外にも migraine の患者さんは「光」「音」「匂い」などに過敏になる場合があり、医学英語ではそれぞれ photophobia, phonophobia, and osmophobia と表現しますが、患者さんはsensitivity to light/sound/odor (smell) のように sensitivity/sensitive という表現を使います。

また migraine の患者さんの中には「これから頭痛が来るのが何となくわかる」という人がいます。この「なんとなくわかるという感覚」を「前兆」aura と呼びます。日本語で「あの人にはオーラがある」などと言いますが、英語の aura も “She has an aura.” のように可算名詞として使われます。ただ migraine の患者さんが自分からこの用語を使って症状を自覚することは稀で、頭痛が始まる前に感じる visual disturbances として自覚されることが一般的です。ですから aura を伴うのかどうかを確かめたい場合には、 “Do you have any visual disturbances?” のような表現を使うといいでしょう。

患者さんによっては「前兆」aura の前に「前駆症状・予兆」 prodrome symptoms が現れる方もいます。その症状は実に多様で、患者さんも実に色々な表現を使います。何か特定の食べ物を無性に食べたくなる衝動は food cravings と呼ばれますし、気分が変化することは feeling などは使わずに mood changes と呼ばれます。話したり考えたりすることが困難になることは difficulty in thinking/speaking と表現されますが、この in が省略されて difficulty thinking/speaking とも表現されます。

よく numbness and weakness という表現が使われますが、前者は「感覚の低下・消失」であり、後者は「運動(機能)の低下」という意味になります。名詞で使う際には “I have numbness and weakness.” のように to have を使い、形容詞で使う際には “I feel numb and weak.” のように to feel が使われます。

これもよく誤解されているのですが、 visual/hearing loss というのは「視力・聴力の低下」であり、「視力・聴力の消失」ではありません。これらが完全に消失した状態はそれぞれ blindness/deafness と区別して表現されますので注意してくださいね。