外資系の企業が日本で健康診断を行う際、英語圏出身の受診者が日本の検査方法に戸惑うことがよくあります。その代表的なものの一つが「視力検査」です。日本で用いられている「ランドルト環」(Landolt CもしくはLandolt broken ringなどと呼ばれます)は決して世界共通というわけではありませんし、視力の表現も異なる場合が多いからです。そこで今月は「視力検査」に関する英語表現を紹介いたします。
まず、次の2つの和文を英訳してください。
どちらも簡単そうで、意外な落とし穴があります。では、見ていきましょう。
「視力検査」としてよく使われる表現には、読者の多くの方が思いついたであろう“eyesight test”のほかに、“visual acuity test”という表現がよく使われるので覚えておいてください。また、例文のように、それらの表現を使わない方法もあるので参考にしてださい。
英語圏での視力検査では、「ランドルト環」が使われるとは限りません。国や地域によっても異なりますが、アルファベットを読み上げて計測するのが一般的です。 また、細かいことですが、「ランドルト環」のような対象物の場合、「上」と「下」は“up”“down”ではなく、“top” “bottom”となりますので、これにも注意してくださいね。
続いて、以下の表現を英訳してください。
視力の表現は日本と英語圏では異なるため、「視力は1.0ですね」と言いたい場合、“Your visual acuity is 1.0.”と言っても、多くの場合通用しません。北米圏では、“You have 20/20(twenty-twenty)vision.”、その他の英語圏では“You have 6/6(six-six)vision.”となるからです。
視力1.0に相当する人が20フィート(カナダ以外の、メートル法を使う国では6m)離れて見える文字を20フィートで見ることができたら、この視力を20/20(または6/6)visionと呼びます。そして視力1.0の人が10フィート(3m)まで近づかないと見られない文字を20フィートで見ることができたら、この視力を20/10(6/3)visionと表現します。これは日本の視力2.0に相当します。同じように視力1.0の人が40フィート(12m)離れて見えるものを20フィートでしか見られないとしたら、これは20/40(6/12)visionとなり、視力0.5に相当します。
もうお気づきだと思いますが、日本の視力はこれを分数としてとらえ、小数計算をしているのです。すなわち20/10(vision)=(視力)2.0、20/20(vision)=(視力)1.0、20/40(vision)=(視力)0.5ということです。このほか、視力1.0に相当する視力の人を「正常視力の人」として、それ以上の視力を計測しない場合もあるため、「40/20 visionは異常」と思う方もなかにはいらっしゃるので、気をつけるようにしてください。
視力検査の結果を伝える際には、「近視」“myopia”、「遠視」“hyperopia”といった専門用語では伝わらない場合もあるため、それぞれ“nearsighted”、“farsighted”という慣用表現も覚えておくといいでしょう。